不妊治療とは?
不妊治療とは?
不妊治療とは、赤ちゃんを希望しているにもかかわらず、1年以上の性生活を送っても妊娠に至らない場合に、医療の力を借りて妊娠の可能性を高めていく治療のことです。不妊治療は、さまざまな要因で妊娠が難しい場合に、個別に適切な治療を行います。不妊の原因は、女性側、男性側、またはご夫婦双方に、あるいは原因がはっきりしない場合など、さまざまです。
不妊治療では、お一人おひとりの状況に合わせて、身体への負担が少ない方法から、段階的に治療を進めていくことが基本となります。
不妊治療の目標
不妊治療の目的は、妊娠しやすい身体の状態を整え、赤ちゃんを授かる可能性を高めることです。
治療の過程では、身体だけでなく、気持ちの面でも負担も大きくなりがちです。
そのため私たちは、治療の効果だけでなく、安心して治療を続けていただけることを大切にしています。
不妊治療のあゆみ
不妊治療は、決して新しい医療ではありません。
1978年にイギリスで、世界で初めて「体外受精」によって誕生した赤ちゃん、ルイーズ・ブラウンさんが生まれましたが、これが不妊治療の大きな転換点となりました。
「体外受精」とは、卵子と精子を体外で受精させ、その後受精卵を子宮に戻す方法です。
日本でもその後、不妊治療は少しずつ広がり、技術の進歩とともに選択肢が増えてきました。近年では、胚の成長を詳しく観察できるタイムラプスや、遺伝子に関する検査なども導入され、より一人ひとりに合った治療が可能になっています。
不妊治療を受ける方が増えています。
現在、日本では約「4.4組に1組」のご夫婦が、不妊治療を経験していると言われています。
晩婚化や出産年齢の上昇など、社会的な背景もあり、不妊治療は特別なものではなくなってきました。
また、2022年4月からは、体外受精や顕微授精などの治療が保険適用となり、経済的な負担が軽減されたことで、治療を始めやすい環境が整いつつあります。
保険適用について
体外受精や顕微授精などの高度な治療には、保険適用のルールがあります。
| 項目 | 制限内容 |
|---|---|
| 女性の年齢 | 治療を始める日の年齢が43歳未満であること。 |
| 治療を受けられる回数 | お子さん1人につき、回数の上限が設けられています。 |
| 40歳未満 | 通算6回まで(胚移植) |
| 40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(胚移植) |
知っておきたいこと:
① タイミング法や人工授精は、年齢や回数の制限なく保険が使えます。
② 一部の検査や治療は保険適用外となる場合があります。
不妊治療の主な方法
不妊治療は、患者さんの状態に応じて、様々な方法が選択されます。治療法には、体への負担が少ないものから、高度な技術を要するものまであり、段階的に進められることが一般的です。以下は代表的な治療方法です。
1. タイミング法
タイミング法は、排卵日を予測し、妊娠しやすいタイミングで夫婦生活(性交渉)をもつ方法です。基礎体温や超音波検査を用いて、排卵のタイミングを把握します。身体への負担が少なく、最初に行われることが多い治療です。
2. 人工授精(AIH)
人工授精は、採取した精子を排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入する方法です。精子の数や運動率に問題がある場合、タイミング法で妊娠に至らない場合に行われます。
3. 体外受精(IVF)
体外受精は、卵子と精子をを体外で受精させ、育った受精卵を子宮に戻す治療です。卵管が閉塞している場合や、男性側に精子の問題がある場合など、他の治療法で妊娠が難しい場合に選択されます。
4. 顕微授精(ICSI)
顕微授精は、1つの精子を卵子に直接注入する方法です。精子の数が極端に少ない場合や、運動率が低い場合に使用されます。
先進医療について
不妊治療では、基本的な治療に加え、妊娠の可能性を高めることを目的とした、「先進医療」が行われることがあります。これらはすべての方に必要な治療ではなく、これまでの治療経過や、身体の状態に応じて、医師が適切と判断した場合に選択されるものです。日本では現在、不妊治療における先進医療として、主に次のような方法があります。
1. SEET法(卵巣刺激法)
受精卵を戻す前に、受精卵が育った培養液を子宮内に注入する方法です。子宮内の環境を整え、着床しやすくすることを目的としています。
2. タイムラプス
受精卵を培養しながら、成長の様子を連続的に観察できるシステムです。受精卵を外に出すことなく発育を確認でき、より良い状態の胚を選ぶことができます。
3. 子宮内膜スクラッチ
子宮内膜スクラッチは、子宮内膜を軽く傷つけることで、着床環境を改善する治療法です。軽微な損傷を与えることで、子宮内膜の修復が促進され、胚の着床がしやすくなるとされています。過去に移植しても着床できなかった方に検討されることがあります。
4. PICSI(精子選別法)
ヒアルロン酸を含んだ培養液に精子を泳がせ、ヒアルロン酸に結合した精子だけを選びます。見た目ではわからない質の良い精子を選んで受精させることで、受精率や妊娠率の向上、流産率の低下が期待できます。
5. IMSI(顕微精子選別法)
IMSIは、高倍率顕微鏡で精子を詳細に観察し、形態的に最も良い精子を選らんで、顕微授精(ICSI)を行う方法です。
6. ERA検査(着床前胚評価)
ERAは、子宮内膜が最も着床しやすいタイミングを調べる検査方法です。胚移植の時期を調整することで、妊娠率の向上を目指します。
7. ERPeak
ERPeakは、ERAをさらに進化させた技術で、解析遺伝子数を絞ることで、診断制度を高めます。
8. 子宮内細菌叢検査(EMMA / ALICE検査)
EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)は、子宮内膜に存在する細菌の種類とバランスを調べる検査です。着床に良いとされる ラクトバチルス属(善玉菌) が十分か、着床を妨げる可能性のある細菌が存在するか、子宮内膜の細菌叢(マイクロバイオーム)が「着床に適した状態」かを判断する検査です。一方、ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)検査は慢性子宮内膜炎の原因となる特定の病原菌を調べる検査です。 この検査により、細菌の不均衡を特定し、必要に応じて抗生物質治療などを行うことで、着床環境の改善を図ります
9. 二段階胚移植法
二段階胚移植法とは、1回の治療周期の中で初期胚(分割期胚)と 胚盤胞 を、時期を分けて2回移植する方法です。最初に移植された胚が、子宮内膜を「妊娠しやすい状態」に整えると言われています。
10. 子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)
子宮内フローラ検査は、EMMA / ALICEとは異なるアプローチで子宮内の細菌環境を調べる検査です。着床を妨げる細菌や病原菌を特定し、それに基づいて治療を行うことができます。
11. 免疫に関する治療(タクロリムス投与)
タクロリムスは、免疫抑制剤であり、着床に関与する免疫反応を調整するために使用されます。不妊症患者においては、免疫の働きが妊娠の障害となる可能性がある場合に検討される治療です。
12. ZyMot法(マイクロ流体技術を用いた精子選別)
特殊なフィルターと精子の運動性を利用して、より良質でダメージの少ない精子を選別する方法です。遠心分離機を使わないため、精子のダメージを最小限に抑えられます。
13. 着床前胚異数性検査(PGT-A)
PGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)は、胚の染色体の状態を調べ、妊娠に繋がりやすい胚を選ぶための検査です。主に高年齢の方や、流産を繰り返してる方に検討されます。
*先進医療は、保険診療とは異なり、自費診療となりますので、実施の可否や必要性については、必ず医師とよく相談した上で決定します。
不妊治療の費用
不妊治療の費用は、治療方法・回数・使用する薬剤・保険適用の有無などによって異なります。
以下は1周期あたりのおおよその目安です。
タイミング法
- • 費用目安: ~ 5000円程度
- • 排卵日予測や超音波検査、ホルモン検査などが中心です
- • 保険診療の場合、自己負担は比較的少額です
人工授精(AIH)
- • 費用目安:~ 1万円程度
- • 精子調整費用を含みます
- • 保険適用回数内であれば負担は抑えられます
体外受精(IVF)
- • 費用目安:20万~50万円程度(1回あたり 保険診療は3割負担 高額療養費制度が利用できます)
- • 採卵、培養、胚移植などを含みます
- • 保険診療の場合は年齢・回数制限があります
- • 自費診療では追加検査・培養法により費用が変動します
不妊治療をお考えの方へ
不妊治療は、医学的な技術の進歩により、選択肢が広がり、多くの方が妊娠のチャンスを得られるようになっています。一方で治療を進める中で、不安や迷いを感じる方も少なくありません。
当院では、治療内容を丁寧に説明し、患者様一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、無理のない治療を一緒に考えていくことを大切にしています。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。